墓じまいの費用相場と自治体補助金の探し方|改葬先ごとの比較と「しない」選択肢
墓じまいの総額は、情報源をまたいで見ると 30万〜300万円 という広い幅で示されています。 金額が10倍も開くのは、総額を左右するのが「墓石を撤去する工事」ではなく、遺骨をどこへ移すかだからです。
自治体によっては撤去費用の一部を助成する制度がありますが、全国一律の制度ではなく、多くは公営墓地を返す人向けです。 この記事では費用を内訳に分けたうえで、自分の自治体に制度があるかを調べる手順を整理します。
墓じまいとは何か
墓じまいとは、今あるお墓から遺骨を取り出し、墓石を撤去して使用権を返し、遺骨を別の場所へ移すことをまとめて指す言葉です。 法律上の名前は改葬で、「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)第5条により市町村長の許可が必要と定められています。許可を出すのは遺骨が現にある場所の市町村長です(同条第2項)。移す先ではなく、今お墓がある側の役所という点がつまずきやすいところです。
申請書の記載事項と添付書類は墓地、埋葬等に関する法律施行規則第2条で決まっており、死亡者や改葬先の情報のほか、今の墓地・納骨堂の管理者が作成する「埋蔵の事実を証する書面」と、申請者が墓地使用者本人でない場合の墓地使用者の承諾書が要ります。 つまり役所へ行く前に、今の墓地の管理者と移転先の両方へ話を通す必要があります。
改葬は年間17万件超。ただし「お墓の数」ではない
厚生労働省の衛生行政報告例によると、令和6年度(2024年度)の全国の改葬件数は176,105件でした。前年度の令和5年度(2023年度)は166,886件で、1年で9,000件以上増えています(e-Stat「令和6年度衛生行政報告例 第6表 埋葬及び火葬の死体・死胎数並びに改葬数」)。
ただしこの数字は、墓じまいをしたお墓の数ではありません。 改葬の申請書は死亡者ごとに書く形式のため、ひとつのお墓に複数の遺骨が納められていれば遺骨の数だけ手続きが発生します。「年間17万基の墓が撤去されている」と読むのは誤りです。 なお同じ統計では、無縁墳墓等の改葬が3,006件(令和6年度)別掲されています。
費用の内訳:金額が動くのは「移す先」
費用を項目に分けると、次のようになります。金額は複数の情報源が示す目安の幅で、確定した相場ではありません。
| 費用の目安 | 支払う先 | 備考 | |
|---|---|---|---|
| 墓石の解体・撤去 | 1㎡あたり10万〜15万円程度 | 石材店 | 重機が入れない・区画が広いと上がる |
| 遺骨の取り出し | 3万〜5万円程度 | 石材店・業者 | 撤去費に含む場合もある |
| 閉眼供養のお布施 | 3万〜10万円程度 | 寺院・僧侶 | 決まった額はない(後述) |
| 離檀料 | 無料〜20万円程度 | 寺院 | 法令上の定めはない(後述) |
| 行政手続き | 数百円〜1,500円程度 | 市区町村 | 改葬許可申請の手数料 |
| 新しい納骨先 | 5万〜250万円程度 | 霊園・寺院・事業者 | 総額の幅はここでほぼ決まる |
出典ははせがわ「お墓じまいの費用平均」(総額の目安を30万〜300万円程度と提示)と、石長「墓じまいの費用相場と自治体補助金ガイド」(撤去費用を1㎡あたり10万円ぐらいからと提示)です。 どちらも事業者が自社の実績からまとめた目安で、公的な統計ではありません。
改葬先ごとの費用を比べる
移す先の選択肢と費用の目安です。石長が示す目安に加え、株式会社鎌倉新書の第17回お墓の消費者全国実態調査(2026年)の平均購入価格を併記します(2026年1月16日〜30日のインターネット調査・有効回答1,267件。同社サービス経由の購入者が対象である点は割り引いて読む必要があります)。
| 費用の目安 | 調査による平均購入価格 | 承継者 | 遺骨を戻せるか | |
|---|---|---|---|---|
| 一般墓(建て替え・移設) | 100万〜300万円 | 152.0万円 | 必要 | 取り出し可 |
| 納骨堂 | 30万〜150万円 | 81.5万円 | 施設により不要 | 契約による |
| 樹木葬 | 20万〜80万円 | 71.7万円 | 多くは不要 | 個別区画なら可の場合あり |
| 合葬墓・合祀墓 | 10万〜30万円 | 調査に単独の集計なし | 不要 | 原則できない |
| 海洋散骨 | 5万〜50万円 | 調査に集計なし | 不要 | できない |
同調査で購入されたお墓の種類は樹木葬47.4%、合祀墓・合葬墓16.4%、納骨堂15.5%、一般墓15.2%でした。
見落とされやすいのが、最終列の遺骨を戻せるかです。合葬・合祀や散骨は費用が抑えられる一方、あとから個別に取り出すことが原則できません。親族で意見が割れそうなときは、費用より先にここを確認すると後戻りできない選択を避けられます。
散骨については、厚生労働省が散骨に関するガイドライン(散骨事業者向け)を公表しています(令和2年度厚生労働科学特別研究事業の研究報告書によるもの)。陸上はあらかじめ特定した区域(河川・湖沼を除く)、海洋は海岸から一定の距離以上離れた海域で行うこと、焼骨は視認できないよう粉状に砕くこと、契約は文書によること、散骨証明書を交付することなどが挙げられており、事業者を選ぶ側の確認材料になります。
お布施・離檀料は「目安」であって決まった額ではない
閉眼供養のお布施や離檀料について、金額を定めた法令はありません。 上の表に載せた3万〜10万円、無料〜20万円といった数字は事業者が示す目安であり、寺院との関係や地域によって考え方が異なります。宗派ごとの教えに関わる話でもあるため、当サイトでは金額の妥当性を判断しません。 金額を先に交渉するのではなく、まず墓じまいを考えている事情を伝えて相談するところから始め、話がまとまらない場合に消費生活センターや弁護士など第三者へ相談する、という順序が現実的です。
自治体の補助制度を自分で調べる5つの手順
墓じまいの補助制度は国の制度ではなく、各自治体が個別に設けているものです。全国どこでも使えるわけではありません。探すときは次の順に確認してください。
手順1:お墓が公営墓地かどうかを確認する 対象は多くがその自治体が運営する墓地(市営・区営霊園など)の返還です。民間霊園や寺院墓地では使えないことがほとんどなので、ここで対象外と分かれば以降の手順は不要です。
手順2:お墓のある市区町村のサイトで探す 探すのは自分が住んでいる自治体ではなく、お墓がある自治体です(改葬の許可を出すのも同じ自治体)。サイト内検索で「霊園 返還」「墓地 返還」「改葬」「墓所」を試してください。
手順3:「補助金」以外の名前で探す 制度名に「補助金」と入っていないことが多いのが、見つけにくい理由です。実在するのは市川市の霊園一般墓地返還促進事業、浦安市の墓所返還者等支援事業といった名称で、「返還」「促進」「支援」「還付」で探すほうが見つかります。
手順4:担当課に直接聞く サイトの構造は自治体ごとに違うため、電話が早いこともあります。窓口は環境衛生課・生活衛生課・霊園管理事務所などで、「墓地の許認可の担当につないでほしい」と伝えると届きやすくなります。
手順5:着工前に申請の要否を確認する 助成は工事後の精算が基本ですが、先に申請や承認が必要な制度もあります。石材店に発注する前に、申請の順番と必要書類を担当課で確認してください。
実在する制度の例(2026年8月時点の公開情報)
| 千葉県市川市 | 千葉県浦安市 | |
|---|---|---|
| 制度名 | 市川市霊園一般墓地返還促進事業 | 墓所返還者等支援事業 |
| 対象 | 市川市霊園の一般墓地の使用許可を受けている人 | 浦安市墓地公園の通常墓所(3.0㎡)・小型墓所(1.5㎡)の使用許可を受けている人 |
| 撤去・原状回復への助成 | 墓地の種類・規模に応じて75,000円〜440,000円(第1種普通墓地4.0㎡は上限240,000円) | 墓石撤去費等の助成、上限150,000円 |
| そのほかの支援 | 使用料の返還(3年以内に未使用で返還なら2分の1、それ以外は4分の1) | 合祀室改葬等許可制度(改葬先の使用料負担なしで返還可。生前予約は35,000円の負担) |
| 窓口 | 市川市霊園管理事務所 | 浦安市役所 環境衛生課 |
出典は市川市「市川市霊園一般墓地返還促進事業」と浦安市「墓所返還者等支援事業」です。 隣接する2市を並べただけでも、助成の上限が15万円と44万円、支援の設計(費用の助成か、改葬先の提供か)まで違います。 他の自治体の金額を自分の自治体に当てはめないでください。 制度の有無・金額・条件は、必ずお墓のある自治体で確認する必要があります。
「墓じまいをしない」「保留する」という選択肢
墓じまいをしなければならない、と定めた法律はありません。墓埋法が定めているのは改葬をするときの手続きです。決められないうちは、そのまま維持するのも選択肢になります。
ただし保留にも費用と時間軸があります。先に把握しておきたいのは次の3点です。
- 年間管理料がいくらか(保留している間ずっと発生します)
- 管理料を滞納したらどうなるか(墓地の使用規則で使用許可が取り消される定めがあるのが一般的です)
- 承継する人が誰もいなくなった場合の扱い
3つ目については、施行規則第3条が無縁墳墓等の改葬の手続きを定めています。縁故者のない墳墓の遺骨を改葬するには、「1年以内に申し出るべき旨」を官報に掲載し、墓地の見やすい場所の立札に1年間掲示して公告し、申し出がなかったことを示す書面を添えて申請する流れです。放置した先には、管理者側の手続きによる改葬という道が用意されているわけです。
「いま決めない」と「何も知らないまま放置する」は別物です。保留するなら、年間いくらかかるかと、誰が管理料を払い続けるかだけは決めておくと、次の世代に判断ごと引き継ぐ形を避けられます。承継者がいないと分かっている場合は、浦安市の例のように生前に改葬先を予約できる制度を設けた自治体もあり、「今すぐ墓じまい」か「放置」かの二択ではありません。
相談先の使い分け
改葬の許可・補助制度はお墓がある市区町村の担当課、墓石の撤去は石材店(複数社の見積もりを内訳ごとに比較)、お布施・離檀料の考え方は菩提寺に直接、金銭面でこじれたときは消費生活センターや弁護士が窓口になります。
全体の順番は終活でやることを緊急度別に整理した優先順位マップに、家の中の物の片付けは遺品整理の費用相場と業者選びのポイントに、建物と土地の判断は実家を売る・貸す・解体する・そのまま持つの4択で比較した記事にまとめています。親の急変直後の段階なら、親が倒れたときに最初にすることをまとめたチェックリストが先です。
当サイトは手続きの流れ・費用相場・サービス比較の情報提供までを扱います。名義や相続に関わる個別の判断は、専門家や自治体の窓口で確認してください。
よくある質問
墓じまいの費用相場はいくらですか? 事業者が公開している目安を並べると、総額でおよそ30万〜300万円という幅になります。幅が大きいのは、墓石の撤去費(1㎡あたり10万〜15万円程度)より、遺骨を移す先の費用(5万〜250万円程度)が総額を左右するためです。公的な統計はないため、単一の金額を相場と考えないでください。
墓じまいに自治体の補助金はありますか? 全国一律の制度はなく、設けている自治体も対象を公営墓地の返還に限っていることがほとんどです。制度名に「補助金」と入っていないことが多いため、お墓がある市区町村のサイトで「霊園 返還」「墓所 支援」などの語で探すか、環境衛生課や霊園管理事務所へ直接問い合わせるのが確実です。
墓じまいの手続きはどこの役所で行いますか? 改葬の許可を出すのは、遺骨が現にある場所、つまり今お墓がある市町村長です(墓地、埋葬等に関する法律第5条第2項)。移転先の自治体ではありません。申請には今の墓地の管理者が作成する埋蔵の事実を証する書面が必要で、申請者が墓地使用者本人でない場合は使用者の承諾書も要ります。
離檀料はいくら払えばいいですか? 金額を定めた法令はなく、決まった相場もありません。事業者の解説では無料〜20万円程度といった目安が示されていますが、寺院との関係や地域によって考え方が異なります。金額の話から入らず、まず事情を伝えて相談するところから始めてください。
墓じまいをしないとどうなりますか? 墓じまいを義務づける法律はないため、そのまま維持する選択もできます。ただし年間管理料は発生し続け、滞納が続くと墓地の規則により使用許可が取り消される場合があります。縁故者がいなくなった墓は、官報への掲載と立札の1年間の掲示を経て無縁墳墓等として改葬される手続きが定められており、令和6年度には全国で3,006件がこの形で改葬されました。
まとめ
- 墓じまい=改葬。許可を出すのは移転先ではなく、今お墓がある市町村長
- 総額の幅(30万〜300万円)を決めているのは撤去費ではなく、遺骨を移す先の費用
- 合葬・散骨は安く済むが、あとから遺骨を取り出せないのが原則
- 補助制度は自治体ごと。多くは公営墓地の返還が対象で、名称に「補助金」と入らないことが多い
- お布施・離檀料に決まった額はない。金額の妥当性は当サイトでは判断しない
- 「しない・保留する」も選択肢。年間管理料と、承継者が絶えたときの扱いだけは先に把握する